自由診療と一般病棟の違いは言わずとも分かっていると思うかもしれませんが、実際に働いてからその違いに驚く医師は多いものです。一般病棟から美容医師へ転職できるのか、自由診療では何が違うのか、転職前に知っておくべき情報をお伝えします。美容医師への転職を考えている方は、最後まで読んで参考にしてください。

美容医師に転職するメリット

美容医師には「美容皮膚科医」と「美容外科医」の2通りの働き方がありますが、ここでは主に美容クリニックで働く医師のメリットを挙げています。

美容医師は高収入

美容医師と言えば、高収入というイメージを持っている方は少なくありません。実際に、一般病棟の医師の年収が1250万円前後であるのに対して、美容医師の求人には1800～2500万円程度の給料がよく記載されています。内科系・外科系でも年収2000万円以上の給料がある医師はそれほど多くない中で、美容医師が高収入であることは間違いありません。

労働環境の負担が少ない

一般病棟には入院患者がおり、命に関わる急変の対応や急患の処置などを行うこともあります。当直や時間外労働、残業は当たり前で、上司からのプレッシャーも大きくプライベートがほとんど確保できない状況です。美容クリニックでは予約制の診療スタイルが基本です。急変や急患はほとんどなく、自分のペースで仕事ができプライベートの時間も確保できます。

美容医師になるには

美容医師になるために特別な資格は必要ありません。医師免許を持っていれば誰でも美容皮膚科医になれますが、患者さんが満足できる治療を行える医師になるには、美的センスや深い知識、整形手術でデザインを形にする技術が必要です。

一般病棟の医師でも美容医師に転職できる？

多くの美容医師は、医学部を卒業してすぐに美容の道へ進んだわけではありません。形成外科や皮膚科など他科から美容医療をはじめた経歴がほとんどです。求人情報でも「未経験者歓迎」としているクリニックはたくさんあり、内科医や精神科医などまったく外科経験のない医師でも美容外科への転科はできます。

他科での経験が逆に、広い視野をもって美容医療を行える強みになることさえあります。自由診療だからこそ自分のアイデアや技術を新しい形で生かせるともいえるでしょう。ただ、転科すると初めての症例や経験が多く、すぐには一人前として活躍できません。他科での経験があまり役に立たない可能性もあります。

転職に有利な資格はある？

美容医療に関する高いレベルの知識と技術を持っていることを証明できる資格があると、転職だけでなく開業のときにも有利です。

美容皮膚科医であれば「日本皮膚科学会認定皮膚科専門医」の資格を持っていると高い技術と知識を兼ね備えた皮膚科医であることが証明されます。また「美容皮膚科・レーザー指導専門医」という資格もあります。

美容外科医師になるなら「形成外科専門医」の資格を取得することを日本形成外科学会はおすすめしています。美容外科で取り扱う治療の多くは形成外科で学ぶ手技が基本となっているからです。形成外科の基礎を固めて技術を磨くことで腕の良い美容外科医として活躍できます。

美容外科で一定以上の経験を積み、厳しい審査を通れば「日本美容外科学会専門医」の資格も取得できます。

自由診療と一般病棟の違い

自由診療と一般病棟ではさまざまな違いが生じますが、現場の働き方でも異なる点は多く、戸惑ってしまう医師もいます。医師が働くうえで感じやすい違いについて解説します。

働き方

一般病棟で働く場合、夜勤やオンコールなどの対応で多忙ながらも地域医療の発展に貢献できます。治療に関しては保険診療に基づいた診断や治療を計画でき、よほどのことがない限り、治療結果が医師へのプレッシャーとなることは少ないでしょう。

自由診療をしている美容クリニックは保険診療と異なり、オリジナルの治療ができるため治療へのやりがいを感じやすい傾向があります。ただし、治療結果がクレームとなって帰ってくることもあり、強いプレッシャーもあります。

患者とのかかわり方

一般病棟では、命の危機や健康的な生活に支障がある病気やケガの治療をみんなが平等に受けられるようになっています。多くの場合、大勢かつさまざまな症状の患者さんを相手にするため、多忙で気持ちに余裕がなくなることもあります。

一方、自由診療は命や生活には支障はないけれど、よりよく生きるために容姿や機能を改善したいという思いを持った患者さんが足を運びます。基本的に予約制で、1人の患者さんにじっくりと時間をかけられます。

求められる医療

一般病棟を受診する患者さんは病気やケガを治すのが目的で、健康保険制度にのっとった診療が進められます。治療が基本で、見栄えや生活への支障はリスクのひとつなので、患者さんのニーズを必ずしも満たせないのが現実です。接遇やサービスの良さは加点になります。

自由診療に訪れる患者さんは治療費を全額自己負担で支払うため、同じ治療を受けるなら「施設の快適さ」「スタッフの親しみやすさ」「「サービスの充実」などより多くのニーズを満たしてくれるクリニックを選びたいと思っています。患者さんの期待に応えられなければ減点となり、集客できません。

自由診療は向上心と探求心が満たされる

保険診療ではどの医療機関でも治療や検査が国によって決められています。ベテラン医師も新米医師も決められた範囲の中で治療を選択し、内容によって金額が決まります。

自由診療は用いる機器や薬剤、手順なども自分で選べ、治療の料金設定も医師が自由に決められます。思ったような結果が伴わないときには、患者さんからのプレッシャーを感じるかもしれません。しかし、多くの症例から得られる結果を治療に生かすため、日々の診療からスキルを磨けます。

保険診療では治療できないのが見た目や不便さの改善です。自由診療はコンプレックスや不満、悩みを取り去ることができる治療ができます。専門的知識を高めていくことで、より多くの患者さんに喜んでもらえ集客にもなります。努力や工夫が結果としてみえるため、向上心や探求心のある職人気質の方はやりがいや達成感を感じられるでしょう。

自由診療への転職は大変？

自費診療では治療にかかる自己負担が大きいために、スタッフや医療に対して期待が高まり、要望も多い傾向です。接遇や治療結果に対する不満をあらわにする患者さんに、どう接したらいいのか悩むこともあります。「美容医師は年収が高く、時間に余裕が生まれた働き方ができていいな」と軽く考えて転職すると、痛い目を見るかもしれません。

他科からの転職は求人サイトを活用しよう

他科から美容に転科するなら、将来的に開業する可能性もあるでしょう。昨今では医師の転職ニーズが高まり、他科の医師が美容医師へと転職するときには独立も視野に入れた動きが活発になっています。

一般の求人サイトへ登録しても希望に合わない求人を紹介されたり、上手く希望を汲み取ってもらえないのは、こうした医師の転職の流れをアドバイザーが汲み取れていないのです。

美容医療業界の市場は男性にも広がり、さまざまな美容特化型クリニックが今後も増えていくはずです。もし開業するとなると、スタッフの求人、ブランディング、集客など医療以外のビジネスに関する知識も必要になります。

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